2015年10月2日金曜日

ウィーンブリッジ回路によるオペアンプICを使ったCRオシレーターの作成

TEACの骨董品オープンリール・テープデッキ調整用に工作しました。調整において一番よく使う周波数 400Hz での規準レベルとなるオーディオジェネレーターをお遊びで作成しました。物を捨てられない症候群の 無銭庵 仙人 と申します。道楽による電子工作の一環であり正規の測定器としてオーディオジェネレーターは所有していますが 工作したユニットは結構精度が確保できました。面白いオーディオジェネレーターが工作できましたので 電子工作におけるヒントとなれば幸いです。

又 CR OSC 応用回路としてオシロスコープ自己校正用信号発生器も作成しました。道楽で使用している測定機器も精度が出ているかを確認しないと 安心して道楽作業を続けることができません。
Oscilloscope Calibrator (オシロスコープ校正器)です。

400Hz OSCユニット Size 47mm×72mm Sanhayato ICB-288G互換基板使用


TEAC X-10R を多数台道楽で修復しましたが その調整項目において基準となる調整信号の多くは 400Hz を使って調整します。プロの録音作業では録音する前にはキャリブレーションといわれる 正弦波信号で録音の基準点を確認・調整します。X-10Rサービスマニュアルによると 録音・再生レベル調整に使われる基準レベルは 400Hz -12dBm,-22dBm,-8dBm  などの基準信号を使用します。
又通常の録音作業においてもキャリブレーション信号をテープの最初に録音してあれば機器が正常に動作しているかが判明します。テープ種の違いによるテープ感度差も確認することができます。

今回作成した発振器は 400Hz 単独の回路ですが 通常のオーディオジェネレーターであれば周波数が可変できる仕様の測定機器が大半です。オーディオ帯域用であれば周波数は10倍程度を可変範囲として分割発振しています。4バンド程度の分割です。安価なCRオシレーターであれば 出力レベル・正弦波の歪率にはばらつきが結構あります。正確なレベル信号を出力するには複数台の測定機器をセッティングするのに手間取る結果となります。正確なレベルを調整するのに校正されたミリバル・周波数カウンターなどを使用しなければなりません。このように各機器を校正しなければテープデッキ調整作業を進めることができません。又正確なマニュアルで指定された信号レベル調整においては600Ωアッテネーター(減衰器)を使わなければ 正確なレベル信号とはなりません。この手間を省くために いつでも正確な基準レベルが発生できるユニットを作成しました。

工作が完成したOSCユニットの仕様

発振周波数  400Hz  歪率(THD) 0.015% 周波数ドリフト ±1Hz以内 レベル変動 ±0.2dB以内
出力レベル  -12dBm   ライン入力レベル デッキ内では 0dB の基準・dbx出力レベル
                 VUメーター0VUレベル調整・出力レベル調整・録音レベル調整      
         -22dBm   ライン入力レベルバランス調整 dbxユニット送出レベル調整
                    -8dBm   dbxユニット送・受信 基準レベル信号
                      0dBm(0.775V)   ミリバルとの校正調整信号 基準レベル
主な半導体  NJM072D,NJM4580DD,2SK30A(FET),1S1555


400Hz -12dBm 信号歪率測定 THD 0.015%測定
今回発振ユニットを設計にあたり苦労したのは正弦波波形の歪率とレベル変動です。ウィーンブリッジ発振回路については他の諸先輩方が詳しく説明をされていますので 発振原理・理論などについては簡単な説明とします。ウィーンブリッジで検索すれば詳しく説明されています。
C(コンデンサー)・R(抵抗) の組み合わせによる発振回路です。周波数を決定する場合の素子は コンデンサー容量値を可変する場合ではバリコン(VC)などを使いますが大きさが大きくなり使い勝手が悪くなります。半導体素子であるバリキャップなどを使うこともできますが回路が複雑となります。今回周波数を正確に調整するのに半固定抵抗(SVR)を使って抵抗値を可変して調整することにしました。発振回路のコンデンサーは汎用品のフィルムコンデンサーを使用しました。温度補償回路はありませんが実用レベルで使用できるユニットが完成できました。



実験回路による動作試験及び設計

今回回路設計においてお手本となったオーディオジェネレーターは 年代としては結構古いモデルです。LUXKIT 正弦波信号発生器キット M-3G です。1983年に発売されていました。当時発振回路に使用されていたICはICの本家である TL082 を使った発振回路が採用されています。同等品は現在においても特性が良好であり大量に量産されています。薬のジェネリック品と同様に国産セカンドソースのICにおいてはプラスチックパッケージでありながら米軍規格品よりも安定動作するICです。 類似品JRC製 NJM072D を使った設計となりました。このICは1個50円程度で入手することができます。トランジスターを使ったディスクリート回路よりは簡単で安価に工作できると思います。
ほとんどの使用している部品などは手持ち品を多用しています。特殊な部品は使用していません。


400Hz オーディオ・ジェネレーター回路図






最終完成した回路図を掲載します。ここまで到達するのに空中配線でバラック状態での回路を組み立てて確認しています。今回 特性を手持ちの測定機器を酷使して各部品定数を確定しています。電源回路はプラス・マイナス12V2電源が必要であり電源基板ユニットから OSCユニット基板に給電します。電源基板回路については別ブログ ICを使ったステレオアンプの工作編に 詳細を記載しています。 musenan02.blogspot.com 
別ブログで工作した時に多数購入したICなどを流用しています。回路図に記載している部品についても汎用品ばかりです。抵抗は1/4W型の E-12,E-24系列にあるものを使用していますので特殊な抵抗などは今回使用していません。回路図についても昔ながらの手書きで作成しています。PCにはCADソフトもインストールしてありますが古典芸能の手法で作成しました。見苦しいと思いますがご勘弁ください。

実験に使用した各種基板
左の写真は今回のユニットになるまで数台の回路を組み立てて実験しています。電源回路基板は右下にある基板で電解コンデンサーと3端子レギュレーターICでプラス・マイナス 12V が供給できる電源ユニットです。3端子レギュレーターに放熱板を取り付けていますのでICの姿は写っていません。使っている3端子レギュレーターの品番は 正電圧用 **7812 負電圧用 **7912の各社品番の1A容量品を使用しています。大げさとはなりましたがICには大きめの放熱板を取り付け動作温度を下げています。

今回設計に際し 発振回路にはICの入力端子が j-FET を使ったオペアンプICを採用しています。実験では入力端子がバイポーラトランジスター回路のオペアンプ NJM4558DD を使った発振回路でも動作テストを実施しました。結果はウイーンブリッジ発振回路では問題なく発振動作しましたが 最終的に歪率の低いIC NJM072D を使った設計としています。


回路図内での各部の働きについて簡単に説明します。

400Hz オシロスコープ波形観測
一番心臓部である IC1 NJM072D は同じオペアンプが2組搭載されたデュアルオペアンプと呼ばれています。回路図に端子番号も記載していますので工作時活用いただければ幸いです。2組のユニットの内片側を ウィーン・ブリッジ発振回路となっており もう片側は フォロワー回路 増幅度が1以下の入力インピーダンスが高く 出力インピーダンスが低い性質のインピーダンス変換回路もしくはバッファ回路と呼ばれている回路です。負荷側には発振レベルコントロール用AGC回路と並列に400Hz 各信号レベルにプリセットするためのアッテネーター(ATT)が接続されます。
発振回路はプラス入力端子に発振周波数を決定するための抵抗・コンデンサーがアース側と出力端子側に接続されます。出力端子とプラス入力端子間の C・ R は直列接続となります。又プラス入力端子とグランド間には同じ容量値・抵抗値の C・ R は並列接続となります。回路図ではコンデンサーは XC 0.022μF/50WV フィルムコンデンサーを使用しています。抵抗については半固定抵抗 1K(B) 固定抵抗 RA,RB として 15KΩ 1/4W1.5KΩ 1/4W 抵抗とVR1,2 1KΩ(B) が直列接続としています。XR 合成抵抗値として 16.5K ~ 17.5KΩ まで変化できる抵抗の設定です。このコンデンサーを使ったときには半固定VRの中心付近で発振周波数が 400Hz となるようにバラック回路で抵抗値を決定しました。1本の抵抗器の場合であれば 16.5KΩ の抵抗は E-24 系列にはなく特殊抵抗となるため簡単には入手できません。又入手できるとしても高額となるため E-12, E-24 系列 に存在する抵抗を直列接続として 特殊抵抗ではなく汎用抵抗器で目的の抵抗値を得ています。
発振素子であるフイルムコンデンサーは抵抗のように数多くの種類がありません。簡単に入手できる数値は 0.01μF・0.022μF・0.033μF・0.047μF・0.068μF のような数列がほとんどです。部品には 103・223・333・473・683・ のようなコンデンサー容量値の表示をしてあります。**3 の表記で*の表示が5・4・3・2・1と変化しても数列はほぼ変わりません。472の表示であれば 0.0047μFを表します。少ない種類の汎用品であるコンデンサーと汎用品の抵抗の組み合わせで400Hz発振に調整するため使う部品を実験より選択しました。コンデンサーの種類はE-6系列と思います。不足する数値は0.015μFが該当しますが店頭ではほとんど見かけません。数値差間隔は1.5倍と思います。
E系列においては他に E-48,E-96,E-192 系列 が存在しますが簡単には入手できません。

TPで発振周波数測定 マルチプライヤーで×1000倍に逓倍
今回半固定抵抗(SVR)は高額な部品となりますが サーメット型と呼ばれる測定器などに多用される経年変化・特性変化の少ないトリマーと呼ばれる半固定抵抗器です。VR3,10KΩの半固定抵抗以外は同じ抵抗値 1KΩ(B) サーメット型を使用しました。ATT計算過程においても可変抵抗値分を1KΩとして計算しています。通常の半固定抵抗器を使用しても回路動作には影響しませんが安価なSVRですと調整時VRを破損することがあります。そこそこ安定動作するSVRを選択使用してください。
参考 サーメットトリマー RJ13-P 102 日本電産コパル電子製 半固定抵抗器 0.75W型 1KΩ
このSVRが今回使った部品の中で一番高額です。ICは10個以上購入できると思います。この半固定抵抗器を Luxman SQ-38FD のDCバランス・バイアス調整用とするのが最善策と思います。本当に品質は安定しています。ちょっと高額であるのが頭痛の種です。

LUXKIT 正弦波信号発生器キット M-3G を参考として回路を組み立て実験しました。可変周波数発振回路ではなく ×1**, ×2**, ×4** のようにスポットで各種周波数を発振するユニットです。使われている抵抗は特殊抵抗が使われており 通常簡単には入手できません。模擬的な回路でしたが使用する発振周波数に関与する抵抗・コンデンサーを各種テストしましたが 発振周波数により歪率も変化し 送出されるレベル変化も確認できました。周波数可変できるオーディオジェネレーター回路では変化する発振周波数に対して振幅が一定とはならず 各社の測定器では振幅を一定とするために色々特殊回路が搭載されています。
単一周波数だけの発振回路であれば歪率も最良位置に調整ができます。

400Hzにおいて周波数を決定する要因で 同じ周波数とした場合 CX コンデンサーの容量を小さくした場合は RX 抵抗値を大きくしなければ同じ周波数で発振しません。又 CX コンデンサーの容量値を大きくした場合は RX 抵抗値を小さくしないと同じ周波数とはなりません。この CX・RX の組み合わせにおいて 最適な組み合わせを実験しました。組み合わせ変化で発振振幅の変化と歪率の変化が確認できます。最良の組み合わせの値が 今回 NJM072D を使った発振回路での実験で得た数値です。
      (RXとは RA+RB+1KΩSVR の直列接続合成抵抗値)

400Hz 発振周波数調整VR1,VR2 1KΩ(B) を調整します。2つのVRが指針の位置が同じとなるように同時に調整して400Hzに合わせます。測定箇所は出力波形を観察する場所と同じで 回路図では TP(テストポイント)で周波数カウンターを用いて調整します。

回路図で 1/2 NJM072D の左側が ウィーンブリッジ発振回路です。右側は 1/2 NJM072D BUFFERと 記載しましたが 日本語では緩衝増幅段 前段の影響が後段に及ぼさない回路でもあります。回路動作はインピーダンス変換回路で増幅度は1以下です。発振波形の振幅調整用の信号はこのアンプの後から接続します。振幅調整用信号の取り出しで発振回路に悪影響を及ぼさない回路構成で動作します。又出力インピーダンスが低いため負荷側にレベル変動を起こしにくい回路です。ここが周波数測定・出力レベルを測定するテストポイントでもあります。

ウィーンブリッジ発振回路で 出力端子とマイナス入力端子に接続してある抵抗 R1 がオペアンプの増幅度及び歪率にかかわる部品です。安定動作をする定数としては8.2K~10KΩが最良の数値でした。又マイナス入力端子からFETを通じてグランドレベルに接続されます。このFETと直列接続されている R3 とが重要な役割をしています。抵抗値か大きくなると発振しないことになります。R1 8.2KΩ,R3 3.3KΩのバランスをクズした場合発振が不安定となります。

FETトランジスターの動作を思い出してください。FETは真空管に似通った動作をします。トランジスターであればベースに電流か流れればコレクター(C)・エミッター(E)にべース(B)電流に比例して ic が流れる動作が通常のトランジスターです。
通常ソースにFETのバイアス電圧が発生するソース抵抗を取り付ける回路が一般的です。ソース電流が流れるとソース抵抗に一定の電圧が発生します。ソース電圧を基準にゲート電圧を測定すると負の電圧となります。ゲートには高抵抗のゲートリーク抵抗が取り付けられゲートはGNDレベルとなります。
FETはゲート(G)にソース(S)を規準とすると NチャンネルのFETの場合負電圧がゲートに加わります。通常のトランジスターと異なりゲートに負電圧を加えてもゲートには電流は流れません。これが入力インピーダンスが高いことになります。ゲートに加わる負電圧だけでドレイン(D)からソース(S)に流れる電流がコントロールできるわけです。真空管の動作によく似通っています。このゲートに加わる電圧をバイアス電圧といいます。ソースとゲート間に電圧差が無い場合はドレインからソースに電流が流れます。ドレイン電流が流れるとは FETのドレイン・ソース間の抵抗値が小さいことになります。ソース・ゲート間に負電圧が発生した場合 負電圧の値によりドレインからソースに流れる電流が減少します。又何も電流が流れなくなった電圧をカットオフ電圧といいます。この回路では最適動作点で1V前後より低いゲート負電圧が測定できます。

2SK30A単体動作テスト

簡単な装置で実験しました。

定電圧電源より DC10Vのプラス側はソース抵抗,マイナス側はGNDに接続 他の定電圧電源よりバイアス電源 DC3.0Vのプラス側VR①GND,マイナス側はVR③に接続 その他 抵抗 4.7K,100K,10Ω,VR100K(B)と回路計(テスター)3台準備します。

Dドレインに負荷抵抗として4.7K  Sソース抵抗10Ω片側GND Gゲートには 100KΩを取り付け片側はVR100K②の中点に接続 VR100K①GND  VR100K③-DC3.0V接続
 
Dドレイン抵抗4.7KΩに電流計A  Dドレイン・GND間に電圧計B  Gゲート・GND間に電圧計C

上記のセッティングをしました。

形態① Gゲートに電圧を印加しない場合VR②と①が短絡状態
電流計A ドレイン電流 0.2mA  電圧計B ドレイン電圧 0.14V  電圧計 Cゲートバイアス電圧 0.0V
形態② Gゲート電圧-1.0Vに調整(VR100Kを調整)
電流計A ドレイン電流 0.0mA  電圧計B ドレイン電圧 10.3V  電圧計 Cゲートバイアス電圧 1.0V
形態③ Gゲート電圧-0.5Vに調整(VR100Kを調整)
電流計A ドレイン電流 0.1mA  電圧計B ドレイン電圧 4.9V  電圧計 Cゲートバイアス電圧 -0.5V

このような実験結果が得られました。
形態①はゲートバイアス電圧が無い場合です。ドレイン電圧が0V FETのドレイン・ソース間が短絡状態といえます。4.7KΩには電源電圧10Vが加わっており電流は0.2mAです。
形態②の場合ゲートにバイアス電圧が-1.0V印加されておりドレイン電圧は10.3Vで電源電圧が測定できます。ドレイン電流が流れていない時でありFETがカットオフ状態です。
形態③はFETに内部抵抗が発生しており電源電圧の半値ですのでFET内部抵抗は4.7KΩ程度といえます。
FETのゲートバイアスが-0.5V付近でFETのドレイントからソース間に流れる電流がゲートバイアス負電圧により制御されているのが判明します。この時点がFET内部抵抗がバイアス電圧により変化しているわけです。この変化を発振振幅状態を制御できるわけです。一種のAGC回路です。

この実験をするのに高感度電流計、低電圧・内部抵抗値の高い電圧計の準備が必要です。4.7KΩに10Vの電圧では抵抗を流れる電流は 2mA 程度です。最初ソース抵抗 10Ω に発生する電圧を電流に換算しようとしたのですが 発生する電圧は 20mV 程度しか発生しません。この電圧を測定するのに高感度直流電圧計が必要となり 簡単にそのような測定機器は品種が少なく周辺の誘導ノイズで正確な測定はできません。仕方がないのでアナログ回路計ですが YEW3201 での電流測定となりました。DC10V とドレイン抵抗 4.7KΩ 間に直列接続して実験しました。又安価なテスターですと低電圧測定の場合テスターの内部抵抗が回路に悪影響を与え正確な電圧測定ができません。特にハイインピーダンスのゲート電圧測定です。内部抵抗が 10KΩ/V のテスターであれば DC3V レンジでは内部抵抗値は 30KΩ です。ゲート電圧を測定する場合 ゲート・GND間に 30KΩ を挿入した回路となります。この影響で正確な電圧測定ができません。内部抵抗が数MΩ以上のデジタルマルチメーターなどを使って測定する理由です。

今回採用した デュアル・オペアンプIC
このFETの特性を利用して発振回路の発振出力電圧をコントロールするための部品です。実験の結果歪率も小さく又発振振幅波形の大きな最良点はこの回路では 1.2V~1.5V/rms の時が最良動作点でした。動作点を決定する部品が VR3 10KΩ の半固定抵抗です。VRの中点から出力された波形はダイオードと電解コンデンサーで半波倍電圧整流されます。その整流された直流電圧は C1 33μF/16WV のOSコンデンサーで平滑され負の直流電圧が発生します。
この電圧が R5 47Kを通じてFETのゲート電圧になります。ゲートリーク抵抗として R6 1MΩが該当し33μFとの時定数で積分されます。ソース・ゲート間の負電圧が高くなるとFETを流れる電流が減少し発振振幅が小さくなるように制御します。このVRの調整で振幅が大きく歪率が小さい値となる最良動作点にコントロールするAGC回路です。正常に回路が動作している場合C1には1V程度の負電圧が発生します。R4 47KΩの抵抗はドレインからゲートに負帰還をかける抵抗でFET動作特性を改善する抵抗です。歪率に関係します。この発振回路では24Vp-pの歪んだ波形ですが400Hzで発振します。この波形から歪の小さな正弦波波形で発振する電圧が1.5V/rms の電圧です。この調整をVR3 10KΩで調整するわけです。VR3,10KΩを4.7KΩSVRにする場合は R7,3.9KΩに変更してください。VR3調整範囲で安定した発振となります。
注意 この発振回路では R3 3.3KΩの抵抗はこれ以上の抵抗値の高い抵抗に変更しないでください。3.9KΩに間違ったときには発振しませんでした。最適抵抗値は2.7K~3.3KΩが最良と思います。強制的に発振させる場合はFETのドレイン・ソース間を短絡することにより波形は汚いですが発振動作はします。正常動作時電源投入時はしばらくの間 波形は安定しません。数秒でハンチング(過渡振動)は収まります。なるべくハンチング現象の発生しない場所で調整することをお勧めします。C1の容量値によりハンチングの度合いが変化します。C1の目安 80Hz以下 100μF  100Hz~800Hz 47μF  1000Hz~8KHz  10μF  10KHz以上 1μF

1000Hz発振回路の定数


同じ発振回路で CX RX の変更で実験しましたのでその定数を記載します。
CX  0.01μF
RX  15KΩ+1.5KΩ+1KΩSVR

上記の数値で 1000Hz が発振します。発振電圧が安定するのは 1.0V/rms 付近でした。歪率は400Hzと同様 THD 0.015%です。多少現物で抵抗値を調整しなければならないと思います。場合によってはR3の抵抗値を 3.3KΩ±1KΩで調整しなければなりません。AGCレベル調整用の VR3 がスライダー②がTP側になったときはFETに高いバイアス負電圧が加わっています。発振電圧が正弦波波形で200mV 程度となるようにR3を調整します。出力は1.5V/rms でも発振しますが電源投入時ハンチングがあり数秒で落ち着きますが不安定要因ですので この回路で1000Hz 発振の場合1.0V/rms 付近が最良と思います。このように発振周波数によって最良の発振電圧が異なります。可変周波数発振回路の設計が難しいといえます。周波数により最良出力電圧と歪率が違ってきます。
上記写真は周波数を変えて実験するためのテスト基板です。RX.CX を交換する必要があるため基板にC,Rを仮付けができるように半田付けポートを基板上面に8本の接続ポイントを取り付けました。周波数が変更となった場合 AGC 電圧平滑コンデンサー C1 も変更しなければなりません。C1 の値としては周波数が高くなれば容量値を小さくします。又周波数が低くなれば容量値を大きくします。容量として 1μF~100μF の間で調整する必要があります。又デュアルオペアンプも種類が変更できるようにICソケットを使用しています。手持ちにDIP8用のICソケットがないためDIP16用を代用しています。いらない部分はビニールテープで目隠ししています。同じ配線で使用できるデュアルオペアンプは種類も豊富であり そのままICソケットに取り付け実験する事ができます。

発振回路に使用したオペアンプは NJM072D FET 入力段タイプの IC ですが 別基板で安価な PNPトランジスター入力段の NJM4558DD 汎用タイプで実験しましたがほとんど回路定数を変更せずに 1000Hz の発振回路が工作できました。発振回路だけであれば出力電圧は 1V 程度しか取れません。波形出力を大きく可変する回路を追加しました。そこで同じ NJM4558DD を増幅・緩衝(ブッファ)回路とすれば最大 7V/rms の低歪率の出力回路とすることができます。又DIPタイプから横長の TA75458S,RC4558L であっても同じ動作を確認しました。NJM4558DD の IC を使った場合1個20円程度で購入できます。
完成スペック 
1000Hz(1KHz)  MAX 7.0V/rms THD 0.02% 周波数変動 2Hz 以内  レベル変動 0.2dB 以内

参考記載
デッキバイアス調整信号 7.0KHz の場合 信号レベル -22dBm
CX= 0.001μF(102)MF  RX=22KΩ+8.2KΩ+SVR 500Ω C1=4.7μF  約 RX=30.450KΩ
ヘッドアジマス調整信号 12.5KHz の場合 信号レベル -22dBm
CX=560PF(561)DM  RX=22KΩ+330Ω+SVR 500Ω C1=2.2μF 約 RX=22.580KΩ

規準信号からデッキ調整用の複数固定電圧にプリセット

上記の発振回路で 400Hz 1.5V/rms の正弦波が発生できました。ミリバルを使ってT.Pの測定点で1.5V/rmsの電圧に調整が完了していますので この電圧から決められた電圧に調整する回路です。一番簡単な方法ですと可変抵抗器での分圧比により希望した電圧になるように測定都度ミリバル表示で調整すれば良いことですが 違った電圧の場合その都度再調整しなければなりません。これらの手数を省くために出力電圧をプリセットする回路です。

注釈 400Hz 1.5V/rms の表記で rms の表示ですが この表示は正弦波交流の実効値を表します。説明の中で直流電圧と交流電圧が錯綜します。判別の意味で記載しています。紛らわしい場合は数字の前に AC,DC の表示で交流か?直流か?を判別する場合もあります。
交流理論では様々な表記があります。直流電圧表示と異なり 平均値・最大値・瞬時値・実効値 などです。家庭に配電されている交流はAC100V/**Hz と表しますがこの電圧は実効値を表示しています。

TEAC X-10R の場合 400Hz の信号を使って調整する電圧は -12dBm(195mV), -22dBm(61.5mV), -8dBm(306mV) が必要な測定用電圧です。発振回路から 1.3V,1.0V が出力されていますのでこの電圧を抵抗値で分圧するアッテネーター(ATT)回路を構築します。
オームの法則を思い出してください。電圧は抵抗比に比例する から直列に接続された複数の抵抗の中間取り出し点の抵抗値を合成抵抗値で割り算すれば分圧比が判明します。
通常の測定機器であれば細かな数値の特殊抵抗を使って正確な分圧による電圧を取り出すことができますが 特殊な数値の抵抗は簡単には入手できません。ここで汎用品である E-12 又は E-24 系列にある汎用抵抗を使って直列接続します。誤差の吸収は 半固定抵抗 1KΩ(B)を使って微調整するように設計しました。合成抵抗値は 20~ 25KΩとなるように汎用抵抗を組み合わせます。

例として -12dBm の場合は 電圧が195mV ですので 基準電圧 1.5V(1500mV) から計算すると分圧比 195/1500=0.13(87:13) と計算できます。基準電圧が違っている場合も同様に計算します。

各接続ポイントにらおける抵抗値の計算


-12dBm のミリバル表示でVR4を校正します。
組み立てた発振回路では周波数の違い 発振素子の違い により最良の発振波形では出力される交流電圧が異なります。今回は400Hz,1000Hz 1.5V/rmsが最良でしたが その時の発振出力電圧によりATTの定数はその都度計算して求めなければなりません。考え方として下記計算は1.5V/rmsで話を進めます。
(違うユニットでは1.0V/rms が最良発振電圧でした)
ATTを各発振ユニットを共用で使用する場合などでは信号レベルを 1.0V/rms で設計すればよいと思います。再設計の欄参照

接続ポイント-8dBm(306mV) ですので電圧比を求めると 306/1500=20.4 と計算できます。分圧比(79.6:20.4) 合成抵抗値を23kΩと仮定すると電圧比に比例することから 23000×0.796=18308Ωとなり分圧抵抗R13が求められました。
:計算結果からE-12系列の抵抗から近似の抵抗は18KΩとなります。この抵抗値にVR5 1KΩの半分の値500Ωを加算した数値が306mV出力点の抵抗値です。R13 18KΩが確定しました。これから全体の合成抵抗値を比例で求めると 0.796:1=18500:x を計算すると x=18500/.796から23241Ωが計算できました。この数値をを基本に計算します。


-8dBm(306mV)  分圧比 (79.6:20.4)  抵抗比  (18500:4741):

-12dBm(195mV) 分圧比 (87:13) 抵抗比  (20219:3021) 

-22dBm(61.5mV)  分圧比 (95.9:4.1) 抵抗比  (22288:953)

上記のような各ポイントの比率・抵抗値が計算できました。

次に簡単に求められる出力点(61.5mV)で抵抗はR16です。953ΩからVRの半値500Ωを引いた値は453Ωで E-12系列の一番近似値の抵抗は 470Ωが確定できます。R16 470Ω(953-500=453)

R14を求めるには -22dBm(195mV) 点の抵抗値を計算しますと 分圧抵抗値から 3021Ωと判明していますので -8dBm(306mV)点の抵抗値を引き算すると 4741-3021=1720 VRの抵抗値1000Ωを引くと 1219Ωの近似の抵抗は 1.2KΩが確定できます。R14 1.2KΩ(4741-3021-1000=1220)

R15を求めるには -22dBm(61.5mV)と-12dBm(195mV)間の抵抗値は 3021-953=2068 からSVR分1000Ωを引いた値は1068 近似の抵抗は1KΩ R15 1KΩ(3021-953-1000=1068)

計算できた数値をホット側から並べますと
1500mV 18000(R13)+1000(VR)+1200R14)+1000(VR)+1000(R15)+1000(VR)+470(R16) GND

バラック回路で実験後誤差を補正した結果最終の数値はR14を1200から680に変更しました。

1500mV 18000(R13)+1000(VR)+680(R14)+1000(VR)+1000(R15)+1000(VR)+470(R16) GND

上記の机上計算で各固定抵抗値が算出できました。合成抵抗値は 23670Ωとなり仮定した抵抗値と誤差は少なく組みあがりました。これを元に空中配線で仮に組み立てます。各ポイントのVR中心点付近で指定された電圧が発生しているかをミリバルで確認後基板に組み込みます。上記抵抗の組み合わせで半固定抵抗の回転角度はVRでの可変範囲である ほぼセンター位置で出力します。このような分圧回路であれば各ポイントに出力されるレベルは正確となります。各ポイント出力調整用VRを調整してもほかの出力端子にはレベル変動は発生しません。
又他の方法としてATTで出力を固定するのではなく 可変抵抗器(VR 20K程度)で自在に出力電圧を可変する回路も作成できますが測定都度校正しなければなりません。今回は採用していません。

再設計したアッテネーター



(1.3V-in) 15KΩ (1.0V-in) 10KΩ+1.2KΩ (0dBm0.775V out or in) 22KΩ+820Ω VR6(-8dBm 306mV out) 1.0KΩ+4.7KΩ VR7(-12dBm 195mV out) 5.6KΩ VR7(-22dBm 61.5mV out) 2.7KΩ GND  (注 VRは1.0KΩ アッテネーターは 30KΩ/V で計算)
上記のようにマルチタップ構造と設計しました。違った周波数の発振ユニットでは最適出力レベルが異なるためATTを共用するための策です。

この状態で測定物に信号を接続すると負荷インピーダンスの影響により出力電圧が低下します。このままでは接続による測定誤差が大きくなるために使い勝手が悪くなります。ここで負荷変動に対して変化の少なくなるように緩衝(BUFFER)回路が必要となってきます。この役目をするのが同じくデュアルオペアンプを使ってバッファアンプを形成します。使用したICは NJM4580DD(NJM4558DD) のオペアンプでインピーダンス変換回路を形成します。使用方法は簡単で出力端子とマイナス入力端子を接続すると100%NFB(負帰還)がかかった回路構成となります。

BUFFER(緩衝)回路の特長は

増幅度 1 以下・入力インピーダンスが高い・出力インピーダンスが低いのが特徴

このような特性のアンプです。真空管のカソードホロア・トランジスターのエミッターホロア・FETのソースホロア などと同じ働きをします。ICの入力インピーダンスが高くスペックでは5MΩ以上あります。入力インピーダンスが高いため前段からの接続によるレベル変動が少ない入力回路です。又出力インピーダンスが低いため接続する負荷が10KΩ以上であれは負荷による電圧変動は極少なく無視できます。デッキの場合LINE INPUTインピーダンスは100KΩ程度です。L-ch,R-ch パラレル接続しますので負荷インピーダンスは50KΩとなりますので出力インピーダンスが低くないとレベル変動が発生します。
上記の緩衝増幅器がIC2です。単独のオペアンプが2組入っていますので 片側をお遊びで 0dBm(0.775V)専用の出力端子を設けました。これらの出力切り替えする部品は SW1,SW2 が該当します。ただスイッチを切り替えるとき一瞬接点がオープン状態となるため その瞬間は IC 不安定動作が考えられます。プラス入力端子には開放状態を避けるために高抵抗を挿入しました。 R17,19 2.2MΩ
又出力端子においても無負荷開放状態を考慮し負荷抵抗を取り付けました。R18,20 47K~100KΩ

完成です。複数の周波数に対応するため新たに各周波数ごとのユニットを作成しました。ATTも共用とするためシリーズ抵抗回路に各タップ出しをして複数のOSCからの異なる出力電圧に対応するように再設計しました。あとは見栄えの良いケースに組み込むまでの作業となります。
このユニットを測定器として使用する場合各周波数において 0dBm 端子でミリバルとキャリブレーションすれば実用性はあります。400Hz,1000Hzユニットは1.3V入力端子に接続し 7KHz,12.5KHzユニットは1.0Vi入力端子に接続します。ユニットの出力調整は各OSCユニットのVR3を調整して 0dBm端子でミリバルの数値が 0dBm に合わせれば調整完了です。どの周波数においても正確に 各出力レベルの -** dBm 出力ができます。

テープデッキ調整用副標準テープの作成

その1

オープンリールデッキ調整用標準テープなどは現在であればほとんど入手不可能と思います。道楽作業で複数台のオープンリールデッキを修復・調整してきましたが 当時の標準テープなども入手し製造後30年以上でありレベル変化が発生しており信頼できません。
標準テープ(テストテープ)はフルトラックでは録音されており通常のテープデッキでは作成することができません。販売数としてはごく少ないフルトラックのテープデッキを入手し修復の結果実用動作が可能となったため 調製用副標準テープを工作しました。
その基準信号となるCR発振器も新規工作です。
発振器の周波数変動は30分の間では 基準値400Hzに対して0.2Hz以内に収まりました。この信号により正確な周波数の副標準テープ作成が可能となりました。


今回作成した副標準テープは 400Hz 200nWb/m レベル設定用信号と 3KHz テープスピード,回転ムラ測定用信号のテープです。基準となる副標準テープであるため信号源としては周波数変化・レベル変動があってはなりません。そのため発振回路の周波数を確定するコンデンサーは精度の良い双信製1%誤差内の精密級コンデンサーを使用して周波数変化が少ない回路としました。回路としては同じ回路設計で組み立てです。
失敗事例として 400Hz発振回路での問題です。コンデンサーを0.01μFとした場合抵抗は40KΩ程度ですが この場合歪率が悪くなります。今回の回路の場合抵抗値が10Kから20KΩ以内でないと歪率に影響します。

その2

蛇の目基板一枚に搭載した 400Hz オーディオジェネレーターの工作



今回再設計したのは簡単な構造でなおかつ 電源部も簡略した基板の工作です。ICも NJM072D 1個しか使用していません。また出力電圧も可変できる構造としてあります。
ひもなしも装置を考慮し 9V 006P乾電池2本を使っても実用となるように再設計です。
基本発振回路は冒頭に記載している各回路部品とは大きく変化はありません。当初バッファ回路として発振回路からは同じICのバッファアンプは簡略化し通常の可変レベル増幅回路としました。
画像中央右下 黄色のSVRは出力調整用で 100K(B)
画像左下   白色のSVRは発振周波数調整用 500Ω(B)
画像左上   水色のSVRは発振制御および歪率を最適調整用 10K(B)

完成度に影響する 工作時注意の要する箇所
CRが直列・並列接続される抵抗器およびフィルムコンデンサーの選択
コンデンサー及び抵抗器は同じとします。今回発振周波数を 400Hz としていますのでコンデンサーは 0.02μF/50WV 2個使用。実装しているコンデンサーは精密級誤差±1.0% 10000PF(0.01μ) を2個並列接続合計4個使用。
抵抗器は正確に発振周波数を得るため 汎用の抵抗器1本だけでは目的の周波数とはならないため 複数個の抵抗器を直列接続とし 微調整の調整個所は一か所のSVR(500Ω)で可能となるようにしました。
直列接続のCR素子 IC OUT 端子と+入力端子間
18K+2.2K=20.2KΩ
並列接続のCR素子 IC +入力端子とグランド間(接地間)
18K+1.8K+500Ω(B)=20.3KΩ
上記定数でVRのほぼ中央で±2Hz以下となりました。各発振素子の抵抗値バランスが取れた状態です。
発振制御 FET 2SK30A ドレインに接続される抵抗器の抵抗値の調整
配線図では3.3Kとなっていますがこの場合は間違いなく発振しますが 歪率が最良で0.032%です。この数値を最良点まで調整です。この3.3Kに抵抗器を直列接続して歪率を下げます。合成抵抗値が4.7Kでは発振しません。何度も抵抗値を変えて現在 3.3K+390Ω=3690Ω のときが歪率 0.012% になります。3.9Kの抵抗器の場合発振が不安定でした。微妙な調整です。
周波数変動実測
通電時 399.6   10分後 399.9 30分後 399.9991 3時間後 400.1077
ほぼ 400Hz±1Hz 以内で動作します。
出力電圧 1.5V/rms(+5dB/m)  THD  .0012% 消費電流 4.2mA

周波数測定機器 ユニバーサル・カウンター Iwatsu SC-7203  10MHz OCXO駆動




上図は汎用ACアダプターを改造し±12Vが出力するACアダプターです。定電圧ICは使用していません。今回採用したACアダプターは汎用品でジャンク品です。不要となったアダプターから今回の発振器駆動用です。使用したアダプターの仕様は 12VA DC:9V/600mA です。±12V出力とするにはアダプターを選別しなければなりません。トランスの2次巻き線が単巻きブリッジ整流用は使用できません。複巻きセンタータップ付き両波整流用のトランスでなければ±12V電源はできません。トランスの出力が実測 9.54V の巻き線が2組ありなおかつセッタータップ仕様のトランスでアダプターが分解できるものでないとだめです。追加部品として SBD ブリッジ整流用ダイオード(40V,2A) 電解コンデンサー 1500μF/16WV×2, 2200μF/35WV×1 の各パーツをACアダプター内に組み立てます。発振基板でのリップルを心配しましたが問題はありませんでした。AC 9.45V×√2=13.36Vですがダイオードでの損失もあり ACアダプターからは ±12.6V が動作時実測できており実働します。発振器動作電源として 積層乾電池 006P を2個直列接続して ±9V のコードレスとして動作も可能です。
(2023/04/14 追加)

SONY TC-707FC FULL TRACK TAPECORDER
SONY TC-707FC FULL TRACK HEAD BLOCK

SONY TC-707FC FULL TRACK 3-HEAD
上図は製造後半世紀近くなる1/4吋テープ幅の録音・再生機です。テープデッキと呼称しましたがモニタースピーカー・アンプも内蔵されており モノラル・テープレコーダと呼ぶべきかもしれません。
このテープデッキを使い常用使用する副標準テープ(サブ・テストテープ)を新規作製です。記録する信号を今回工作したCR発振器を信号源とします。デッキのテープスピード誤差基準レベルは判明していますので作成した副標準テーフを正規テストテープと校正すれば標準テープと同じ品質のものができるわけです。

SONY TC-707FC FULL TRACK
スピード偏差    +0.16% (3005Hz前後を観測)
ワウフラッター   0.018~0.022% (レンジ 0.1%)
(測定器 LEADER LFM-39A WOW & FLUTTER METER  標準テープ O-W 190)

修復完了した SONY TC-707FC 19cm/sec の特性測定結果です。標準テープ(TEST TAPE)は Technics(旧松下電器産業) O-W 190 です。TAPE SPEED & FLUTTER のテストテープを所有していますので作成した副標準テープを校正すればほとんど誤差のない副標準テープとなるわけです。録音するときには信号を 3005Hz で録音します。テープデッキのテープスピード誤差を考慮すると録音する周波数は 3005Hz となりスピード誤差が吸収され標準テープと同等となります。

400Hz の信号は TEAC TEST TAPE YTT-5001A LEVEL SET 400Hz,0dB(200pWb/mm) と同等の副標準テープを作成します。この信号は録音する信号が磁気テープに記録される磁束密度の歪率が1%以内となる最大録音信号の目安となる数値です。録音するテープ種により歪率及び磁束密度は異なるためメーカーが指定したリファレンステープで調整します。テストテープを校正しましたが-1dBほどのレベルダウンが確認できました。副標準テープ作成時には誤差を補正して作成します。

工作したCR発振器 基準信号源 0dBm 400Hz THD 0.015% 低歪率正弦波

正確な周波数の測定に際し所有している周波数カウンターは 岩通 SC-7203 型です。基準信号の 10MHz は TCXO ですが 外部クロック入力端子があり GPS 衛星からの基準信号 10MHz で校正したOCXO を接続し正確な周波数の測定ができます。安定すれば10MHzにおいて変動周波数は0.2Hz以内の精度があります。工作した3KHz正弦波信号を用いて測定器であるワウ・フラッターメーターも校正してあります。
このように測定機器も製造後長期間経過していますが 自己校正をすることにより現在でも精度が確保できています。

次の工作は所有しているブラウン管式アナログ・オシロスコープの校正器の工作です。常用使用しているオシロは製造後25年以上経過しており測定誤差が無いように自己校正用として工作しました。

オシロスコープ校正用キャリプレーターユニットの工作



上記画像はCR発振ユニットの応用で作成した 1000Hz OSCユニットにパルス波形を出力するためのユニット基板です。今回ICの品種を変更して作成しました。バイポーラトランジスター入力となりますが NJM4558DD を使ったウイーンブリッジ回路で動作します。このICは1個25円で入手できています。今回1000Hz発振回路の各部品は RX=12KΩ+1KΩ(SVR.)  CX=0.015μF ICは変更となりましたがその他の回路部品数値は同じ定数で動作しました。OSC発振電圧はT.Pで1.0V/rmsに調整しています。
OSCユニットの規格は 1000Hz 1.0V/rms THD 0.02%  正弦波 5.0Vp-p パルス波 切り替えスイッチでBNC接栓に出力する信号を変更します。

左の画像は普及品 20MHz 2現象オシロスコープです。製造後約25年経過している KIKUSUI  COS-5020 骨董品オシロスコープです。今回作成したOSCユニットで校正作業内容です。
回路構成は 1000Hz 発振回路にコンパレーターIC NJM2903Dを使用しました。ピン配置はNJM4558DD と同じですが電源は単一電源 DC5.0V で動作する設計としました。OSC回路は±12.0Vで動作しますが 片側のDC+12Vから+5.0Vに3端子レギュレーターIC 78M05 を使った電源です。ICの出力端子からは電源電圧 DC+5V に 5.1KΩ の抵抗でプルアップします。+入力端子はGNDレベルとし1KΩでGNDに接続し -入力端子に10KΩ2本直列接続とし 中点からはICの -入力端子に接続。片側をGND もう片側をOSC 正弦波発振回路から入力すると 5.0Vp-p のデューテイー比か50%/50%の波形を出力します。この波形が電源電圧+DC5.0V とGND 間電圧の波形となりますのでオシロスコープ校正用信号となるわけです。この信号をオシロスコープのCH-1,CH-2に入力すると画像の波形が観測できます。OSCユニットの発振周波数は正確に周波数カウンターで調整できていますので f=1/t より計算すると 1000Hz=1/t から 1m.sec と計算できます。ワンサイクルの波形を観察し1/DIV の時間は水平走査時間軸を見ると 0.2m,sec ですから目盛が5個ありますので 0.2m,sec×5=1.0m,sec となりますので このオシロスコープの時間軸は狂ていないのが判明します。同じく垂直感度の校正は 2.5/DIV ですので垂直感度つまみは 2.0V/DIV ですので 目盛2.5×2.0V/DIV=5.0V となりますので垂直感度も正常と判断できます。
このような簡単なOSCユニットを作成することにより正確なキャリプレーター(校正器)が工作できます。道楽で使用する測定機器類はこのようにして自己校正をした機器を使用しています。
今回の校正作業では10対1の測定プローブは使用していません。測定プローブ込みで校正する場合は垂直感度 0.2V/DIVて正常な波形観測ができます。又その時にはプローブの周波数特性調整用のコンデンサー調整ができます。通常は調整しませんがオシロスコープの機種が変更となった場合は調整・確認しなければなりません。
ちなみに今回校正したオシロスコープの入力端子規格は 1MΩ/25PF の規格です。10対1のプローブを使った場合入力インピーダンスは10倍の 10MΩとなりますが垂直感度は1/10倍になります。測定数値を換算しなければなりません。


上記画像は作成した各ユニットをジャンク品のケースに組み込みました。所有しているオシロスコープは高級機種とは異なり普及品である骨董品オシロスコープです。1000Hz の正弦波・パルス波を使ってオシロスコープの自己校正をします。高々測定できる周波数は20MHz 程度ですので 波形値・時間軸点検・調整用に各周波数の水晶発振器を搭載しました。自己校正により安心して道楽作業を続けることができます。一種のこだわりです。
高周波用途としては YEW DL-2140B (300MHz,4ch) 初期型デジタル・オシロも所有していますがオーディオ帯域では出番はありません。

工作した 20.0MHz オシロスコープ校正器
上図は工作した20MHz水晶振動子を使ったオシロスコープ校正器です。ロジック IC SN74NCU04 を使ったDC:5Vで動作する発振器です。周波数は10MHz:OCXOを基準信号クロックとしてユニバーサルカウンターは動作しており完成したこの校正基準器は 通電後20分もすれば 20MHz±20Hz 以内で信号が出力します。

菊水20MHz アナログ・オシロスコープ COS-5020
上図は20MHZアナログブラウン管式オシロスコープ COS-5020型です。20MHz校正器からの信号を観測した画像です。水平時間軸は 0.2msec/DIV で拡大モード×10倍ですので 0.02msec/DIV となります。画面から波形の1サイクル分を計測すると約2.5/DIV と読み取れます。周波数に換算すると20MHzと計算できますので時間軸は正常といえます。
横河 DL 2140B 300MHz 4-ch デジタルオシロスコープ
上図は横川DL 2140Bデジタルオシロの観測画像です。時間軸は 10nsec/DIV で通常モードです。一升に1サイクル分の1波形が観測できた場合100MHzです。観測した波形では1サイクル分は5升あるので 50nsec と計測できます。周波数換算すれば20MHzとなりますので時間軸は狂っていないと判断できます。アナログオシロと同じ波形観測ですが波形の形が異なりこのデジタルオシロでは垂直増幅器の周波数特性が高域まで伸びているため歪波まで観測できるわけです。拡大モードとしての機能は50psec/DIV ですので20GHzですがメーカー保証周波数は300MHzです。

横川(YEW) DL 2104B 300MHz 4-ch デジタルオシロスコープ
上記のようにオシロスコープの能力により観測できる波形には違いがあります。

まとめ


TRIO VT-106S  AUDIO SSVM  AC Millvoltmeter


ほとんどの周波数特性などの測定・調整作業では指定された周波数・レベルで測定する場合が大半です。このようにICが安価となっており周波数ごとの専用発振回路を必要な周波数ごとにユニットとして組み立てたのち 必要な周波数ごとユニットに接続することにより測定のを簡素化が図れます。可変発振回路も実験しましたが 源発振レベル変動・歪率の悪化などの弊害も発生します。
同じような回路を工作する場合は 初心者であれば大きめの蛇の目基板で作成することを推奨します。仮にバラックで組み立て後確実に動作することを確認後プリント基板に配線すると良いと思います。
結構特性のよい発振ユニットが完成しました。パルス波などを作る場合はCMOS演算IC(インバーターIC)を使えば正弦波からパルス波に変換することもできます。その場合は電源電圧である 5Vp-p のパルスの波形が発生できます。発振ユニットの歪率を無視すれば結構大きな電圧の信号を発生できます。
応用として今回使用したオペアンプをコンパレーター回路(NFBを施さない)として組み立てれば源発振信号からパルス波を作成することもできます。この場合は結構高電圧のパルス波形となります。
真空管アンプの特性調査に応用ができます。その場合の周波数は 100Hz,1000Hz,10KHz の3点が発生できれば活用できます。組み立てキットも販売されていますが簡単なオームの法則さえ理解できれば定数は計算できます。


基本設計には変わりはありません。上記ユニット基板は左からアッテネーター・BUFFER基板・400Hz,1000Hz OSC 基板・7KHz,12.5KHz OSC 基板を作成しました。各種類単独の発振回路を組み立てましたが発振周波数違いにより安定に発振をするには各回路定数を微妙に変化させなければなりません・特に心臓部のウイーンブリッジ発振回路において周波数により最善の定数が異なります。微調整する抵抗は R1 8.2KΩは大きく変えてはなりません。振幅制御にFET 2SK30A を使っていますが現在廃品種のため同等品としては 2SK396 が代用可能と思います。発振回路のマイナス端子からの R3 3.3KΩも微調整しなければ安定した発振出力が得られません。発振波形が0.8V~3V程度まで安定に発振する数値を微調整します。これが希望発振する周波数により最適値が異なるためカット&トライしなければ実用になりません。又抵抗とコンデンサーの組み合わせを変えながら希望する発振周波数回路定数を導き出します。RXとして15K~30KΩの範囲でコンデンサーの容量値を変更すればよいと思います。又発振周波数変化に伴い C1も適宜変更しなければなりません。7.0KHzではC1,2.2μF,12.5KHZ では1.0μFに変更しています。周波数が高くなれば取出せる安定した出力電圧は下がります。
最適基準信号レベルは発振周波数により変化しますので 改良したATTは入力電圧で 1.3V,1.0V,0.775V の三種類に対応する設計としました。400Hz,1000Hzでは1.3V,1.0Vを使えますが7.0KHz,12.5KHZ では0.775V,1.0V の端子でないとうまくATT動作ができません。
ATTに使用している抵抗は汎用品 E-12,E24 系列で計算して導き出しました。各端子の出力レベルは -22dBm,-12dBm.-8dBm,0dBm としています。1Vでの合成抵抗値は30KΩとして計算しています。ATTから出力された信号はそのままでは機器に接続することができませんのでBUFFER回路(NJM4558DD) を使ってローインピーダンス出力としています。

今回ユニット基板作成において歪率計を酷使して最適動作点を探りました。自前の測定器として歪率計を所有している方は少ないと思います。使用した歪率計 目黒 MAK-6571A  AUTOMATIC DISTORTION METER です。400Hz,1000Hz 二種類しか歪率は測定できません。固定フィルタータイプで入力レベルを測定し左側のメーターで指針が赤色の範囲であれば正確な歪率を表示します。今回のような調査の時には操作は簡単であり細かなフィルター同調作業は発生しません。任意の周波数における歪率を測定するには別機種の歪率計を使用します。ただ簡単には歪率は測定できません。任意の周波数におけるフィルター同調作業が発生しクリチカルな調整作業をしなければ歪率を測定することができません。型式は シバソク AH979G 連動歪率計 です。ミリバルと20Hzから200KHzまでの低歪率オーディオジェネレーターが内蔵された複合型測定器です。

簡単・安価に作成できますので再現性は良いと思います。測定機器も自作されればいかがでしょうか。可変周波数ジェネレーターとするよりはスポット周波数型でも実用性はあります。


無銭庵 仙人の独り言

今回オーディオジェネレーター工作において動作確認にも使用した骨董品測定機器を紹介します。

所有している骨董品測定器であるオーディオジェネレーター TRIO AG-202A

TRIO AG-202A Audio Signal Generator

現在ほとんど使用していない骨董品オーディオジェネレーターです。別名CR発振器です。型式は TRIO AG-202A 半導体ディスクリート回路で構成されています。やはりTRIO製 高級な部品を使って組み立てられていません。出力可変VRも安価な民生用開放型の部品を使っていますので経年劣化により VRを回転させるとガリオーム状態でノイズが発生します。可変コンデンサーは5球スーパーラジオ用 430PF の2連バリコンを使っています。
下記に納品当時付属していました回路図を記載します。現代の測定機器では配線図などは添付されていません。CR発振器 Audio Signal Generator の表記です。仕様を確認すると歪率は周波数により異なりますが 1%・0.5%以下との記載で歪率は今回作成したユニットに比較して悪い数値です。発振回路には振幅を安定するための策として2段目のトランジスター コレクターにランプが負荷の一部として取り付けられています。高出力で歪を軽減できるように電源電圧も高く約50V程度の電源で動作しています。

TRIO RA-920 600Ω ATT


道楽の初期にAG-202A とコンビで使用していた600Ωオーディオ用アッテネーターです。同じメーカー TRIO RA-920 です。このATTはインピーダンスが600Ωで動作しますので 相棒のオシレーターも600Ω出力に対応しています。オシレーターからは最大10V/rmsの信号が出力されます。当時の組み合わせではミリバルは TRIO VT-106S とCR発振器AG-202A ,アッテネーター RA-920をコンビで使用していました。パッシブ型ATTですのでダイアルつまみを回転して減衰単位を選択使用します。最初ミリバルでAG-202Aからの出力をほとんどの場合0dBmとなるように出力VRを可変してセットアップします。もしも-12dBmの信号にプリセットする場合 減衰する単位の目盛ダイアルを0(零)に合わせると減衰しませんので出力端子からは入力端子と同じ0dBmが出力されます。ダイアルつまみで10dB単位つまみを1の数字に合わせます。その場合出力は-10dBmとなります。さらに1dB単位のつまみで2に合わせると出力は-12dBmとなり希望された出力の値に調整できるわけです。1クリック最少可変単位は右のつまみから減衰量は 0.1dB ,1dB,10dB,30dB となっています。

道楽作業初期に導入した測定機器はほとんどTRIO製でした。内部構造をよく見ると作りは使用されている部品から判断するとほとんどは民生用の部品を使って組み立てられています。その後は測定機器専用メーカー品を導入しています。やはり長期間の使用においては HP,YEW 製は安定動作をします。自己校正しますがほとんどずれは発生しません。骨董品ですが安心して使用することができます。TRIO(KENWOOD)製品は入門者用としては価格面を考慮すればよい選択と思います。測定機器を収集するのも一つのこだわり・自己満足・道楽です。

常用オーディオジェネレーター Shibasoku Distortion Meter/Oscillator AH979G

AG-202A
は道楽初期に導入したオシレーターですが 使い勝手も悪く精度もよくありません。その後導入した AH979G は連動歪率計ですが複合型の測定器です。ロータリースイッチ操作により発振周波数が細かく設定できます。出力電圧設定においても正確な10dBステップATTが内蔵されています。源発振レベルの確認調整作業においては内蔵してあるミリバルで基準レベルを使用前に確認・調整ができます。出力基準レベルも 0dBm(0.775V) と 0dBv(1.0V) の選択もスイッチで切り替えができます。入力端子・出力端子には接続を変えることにより平衡入出力端子・不平衡入出力端子があります。平衡・不平衡変換はトランスで行います。大型のシールドされたトランスが内蔵されています。道楽作業ではほとんど不平衡入出力端子を使用しています。平衡端子のインピーダンスは600Ωと10KΩがセレクトできます。不平衡の場合入力端子のインピーダンスは100KΩで働きます。
発振周波数は 20Hz~200KHz の間において任意の周波数がプリセットできます。周波数もデジタル表示となっており周波数間違いが起こりにくい構造です。出力レベルATTは -70dBから+20dBまで10dBステップでセレクトできます。細かくレベルを選択するときにはミリバルを使ってVRで可変して正確な信号を出力することができます。
おかげさまで上記 TRIO製品はオシロ・デジタルマルチメーターを含めお蔵入り状態です。しかし時々は通電をして動態保存しています。

Shibasoku Distortion Meter/Oscillator AH979G


真空管式CR発振器 目黒 MCR-400A L.F OSCILLATOR

製造は MAY 1968年製の真空管式低周波発振器です。製造後50年以上となる骨董品 ガラクタかもしれません。久しぶりにお蔵入り状態から通電テストをしました。今回ICを使った400Hzジェネレーターが完成したのをきっかけに当時のスペックを確認したかったからです。

MEGURO MCR-400A L.F OSCILLATOR


目を引くのは発振周波数を決定する可変コンデンサーの作りです。TRIO AG-202Aと異なり5球スーパーラジオの汎用2連バリコンではありません。がっちりとしたフレームに大型のバリコンが取り付けられています。ローターも電気的に絶縁されておりシャフトにはベアリングが使われています。ダイアルは5球スーパーのダイアル糸とドラムを使った減速機構とは異なります。ダブルギア方式のバックラッシュが発生しない高級な減速機構です。ダイアルつまみの回転もスムーズに回転します。アマチュア無線VFOなどに使用していた減速機構より頑丈に作られています。ダイアルつまみの触感は現在でもスムーズに回転します。やはり民生品と思われるTRIOと異なり いかにもプロ仕様(業務用)の作りです。
内部の真空管は4本使われています。発振の初段は 東芝 6A-U6 通測用です。次段は同じ仕様の 12B-H7,12B-H7,12A-T7 の4本です。電源回路にはVR150MTのような定電圧放電管は使用されていません。真空管式の測定機器ではほとんどの機器で定電圧放電管が採用されていました。扱う周波数が高周波(RF)でないため大きなドリフトが発生しなかったためかもしれません。しかし電源回路ではフィルター回路は強化していました。もちろん可変抵抗器(VR)も密閉型の通測用を使っています。大きさは通常の小さな半固定VRと違い 24型の単連、2連VRが多数使われています。測定機器専門メーカー製、測定機器内部もよく見ていましたので TRIO製は民生用の作りと表現したわけです。
大型のバリコンはシールドケースに収納されています。当時の測定器としては高級機種と思います。組み合わせて使うミリバルも真空管で動作していました。真空管は半導体に比較して精度は良くありません。菊水の真空管式ミリバルは半導体式のミリバルに比べ経年劣化によるレベル変化がありました。このメカニズムなどは職人が作製した半手作りで量産できる商品ではありません。このような測定機器はほぼオーダーメイドのような機器です。
以前電解コンデンサーなどの一部の部品は交換しています。今回通電テストをしましたが 400Hz の信号を調査しました。周波数のダイアル目盛ずれは 400Hzに対して目盛は406Hzの位置で発振していました。すみませんこの測定器では周波数の単位が Hz ではなく C/S  400サイクルと呼びました。C/S =サイクル/セック(秒) でした。30分ほどの通電では周波数のドリフトは結構発生していました。今回作成したユニットでは通電後でも発振周波数のドリフトはほとんど発生しません。やはり時代の流れで性能もよくなっていると思います。
出力電圧は30V近くまで出力します。やはり真空管式測定機器では電源電圧が高い分有利と思います。出力インピーダンスは600Ωです。歪率計で測定しましたが数値は今回作成したユニットに比較すると悪い数値です。THD 0.22% 400Hzでの測定値です。歪率は一桁違いました。

この測定器は SSG(Standard Signal Generator 標準信号発生器) ではありません。SG(L.F Signal Generator 低周波信号発生器)です。外付けで信号レベルを調整しなければ標準信号とはなりません。呼び方により Generator 又 Oscillator と呼ばれます。

参考記載 インピーダンスが100KΩの10dBステップATT分圧抵抗値

(0dB) 68400Ω (-10dB) 21600Ω (-20dB) 6840Ω (-30dB) 2160Ω (-40dB) 684Ω (-50dB) 216Ω (-60dB) 100Ω (GND)

もう一桁下がった-70dBレベルですと 100Ωの内68.4Ωと21.6Ωと10Ωの直列となります。-70dBは68.1Ωと21.6Ωの中点で -80dBが21.6Ωと10Ωの中点となります。


上記の抵抗配列で100KΩのアッテネーターは構成されています。数字として 684と216が数字の桁はことなりますがこれらの組み合わせで成り立ちます。
仮に0dBを1.0Vとすると -20dBは1/10倍ですので 抵抗の分圧比率を計算する場合 -20dBでの分圧抵抗値を見てみますと 68400+21600=90000  6840+2160+684+216+100=10000  と計算できます。抵抗比率を計算すると 10000/100000 になりますので抵抗比は(9:1)1/10です。出力電圧も1/10になり電圧は 0.1V です。 dBで表すと -20dB となります。-60dBでは100/100000 ですので抵抗比は(999:1)1/1000 出力電圧は 0.001V であり dBで表すと -60dB となります。-10dB では出力電圧は 0.316Vであり dBで表すと -10dB となります。 (-**dB) の出力電圧はGNDを基準とすると抵抗比から出力電圧が計算できます。-30dBでは分圧比より(9684:316)3160/100000 から0.0316Vが出力されます。-50dBでは分圧比より(99684:316)316/100000から 0.00316Vとなります。20dBごとでは桁が一桁下がった数字となります。共通する数字は316の並び数字です。

-10dB,-30dB,-50dB を見ると比率により 0.316V  0.0316V 0.00316V
-20dB,-40dB,-60dB を見ると比率により 0.1V    0.01V    0.001V

これが 10dB ステップのATT構造です。

ミリバルの表示メーターをよく観察すると フルスケールの目盛位置をよく見てください。ミリバルは10dBステップで作られています。電圧表示部では 1と3 が指針フルスケール時の数字ですがよく見ると 3.16目盛と1目盛がフルスケール時重なっています。これが上記計算した数字と同じことが判明します。
実際のミリバルでは初段では0dB,-60dbを切り替え その後二段目のメイン-10dBステップ,0dB~-60dBアッテネーターとしています。入力インピーダンスを各レンジ一定値としており 測定できる範囲を拡大しています。60dBの減衰器では9.99MΩと10KΩで分圧すると-60dBとなります。入力抵抗は10MΩです。入力抵抗が1MΩの場合は 999KΩと1KΩで分圧します。高い電圧を測定する場合に使用します。低い電圧の時は分圧せずにスルーでインピーダンス変換回路を通過後メインのATTで10dBごとに分圧します。これがミリバルのアッテネーター構造です。

電圧(V)・電流(I)値の増幅・減衰を表す場合 対数表示では 20log***ですので 半値は6dBです。電力(P or W)は 10log*** であり 半値は 3dB です。

各種測定機器では上記のようなATTと増幅回路の組み合わせで製造されています。

多少算数程度の説明もしてきましたが 測定機器の内部構造が判明すれば故障したとしても代用品などを吟味して修復・調整することも可能です。個人的な解釈を説明しましたので誤記載・誤解釈・誤字が多々発生していると思います。文章校正も一人親方仕事です。参考程度とご理解ください。

by musenan sennin


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